お知らせ

2025-12-20 12:12:00

みんなが主役の大久保ファーム
〜持続可能な都市農業を目指して〜


はじめまして、
大久保ファームの大久保隆です。

私は、東京都八王子市小比企(こびき)町にある、約6,000平方メートルの農地で、年間約20種類の野菜や果物の露地栽培と、貸農園を行っている農家です。
小比企町は、新宿から電車で約45分。八王子市の中心部から約15分圏内にある、昔から住民と農地との距離の近い農業がさかんな地域です。町の中心に流れる湯殿(ゆどの)川の周辺には、田んぼや畑が広がり、コナラなどの雑木林の保全緑地にも囲まれた、昔ながらの里山風景が残っています。


小比企の農業について

小比企の農業を江戸時代まで遡ると、幕府の命令で江戸のまちの人々食料を供給するため、農家は耕地規模を拡大、養蚕も行っていました。ところが、明治・大正以降の鉄道や交通の発達、昭和の第二次世界大戦の敗戦と復興、都市化による人口集中で、時代を追うごとに急速に宅地開発が進み、農地は減少の一途を辿りました。令和現在では、後継者や人手不足、土地の維持管理、税制問題など都市型農業ならではの課題も山積みですが、私たちは、先祖代々守り継がれたこの地で農業を続けています。

歯科技工士から、57歳で就農

そんな小比企で私は、1959年に農家の長男として生まれました。若い頃はいずれ農家を継ぐと思いながらも、手先が器用だったことから実家を出て、歯科技工士の道へ。結婚して実家に戻り子どもが生まれると、地元の小・中学校のPTA会長として「おやじの会」を立ち上げるなど地域活動にも携わりました。現在は、保護司として青少年の更生支援にも携わっています。
そして2016年、高齢となった父がいよいよ農作業が厳しくなり、私は57歳で歯科技工士を辞め、父の後を継ぐべく就農。しかし、農業について多くを教わることができないまま、父は数年後に他界。私一人の試行錯誤の農業が始まりました。
就農して9年経った今もトライアンドエラーの毎日ですが、私は、一度も農家をやめたいと思ったことはありません。私がやりがいと生きがいを感じて農業を続けることができているのは、直売所の「お客さん」や「貸農園」や「援農」に来てくださるみなさんのおかげです。
以下、私のあゆみを年譜でご紹介します。

大久保ファームのあゆみ

就農|脱サラして父の後を継ぐ(57歳/2016年)
歯科技工士を辞め就農。当時は、父と一緒に市場や近所の農家が集まる合同の直売所やスーパーに、野菜を出荷していました。

直売所オープン|消費者との距離が近くなる(59歳/2018年)
畑に隣接した直売所をオープン。「少品目多量生産型」での市場やスーパーへの出荷をやめ、直売所のお客様のニーズにこたえ「多品目少量生産型」に。

父の他界|試行錯誤の始まり(60歳/2019年)
父他界。試行錯誤の日々の一方、直売所に来るお客様との会話を楽しみながら、採れたての野菜を消費者の食卓に直接お届けできることに喜びを感じ、先輩農家や種屋さんなどにノウハウを教わり農作業にもやりがいを感じるように。

銭湯と採れたて野菜|2号店オープン(62歳/2020年)
直売所の常連客の上野さんの発案で、上野さんが通っている八王子市小門町の銭湯「松の湯」に直売所2号店を銭湯にオープン。銭湯に通うお客様にも地域の方々にも、風呂上がりに採れたて野菜を買うことができると、喜んでいただいています。

地産地消の輪が広がる|つくる責任、つかう責任(63歳/2021年)
常連客の口コミなどで、市内の飲食店からも野菜の配達依頼の問い合わせがくるように。このことがきっかけで、地産地消やフードロス問題など、SDGsの取り組みへの意識も高くなりました。

ご縁に感謝|すべての人に健康と福祉を(64歳/2022年)
中学のPTA会長をしていた時の元校長が明星大学の特任教授に就任。教育学部の学生の授業に協力して欲しいとの依頼があり、学生約60名の農業体験の受入を開始。学生は農作業に加え、出荷や販売、接客体験の機会として「八王子環境フェスティバル」にも出店。以降、毎年恒例のイベントになったと同時に、繁忙期の有難い労働力になっています。
さらに、近隣保育園から、園児の食育のために畑を借りたいと申し出があり、かわいい園児たちが定期的に畑に来園するようになりました。
こうしたご縁がきっかけで来園者が増えると同時に、私は、農家一人で生産するのではなく、興味のある人が農作業に参加する「援農ボランティア」の相乗効果や、地域のみなさんに農園を利用してもらうことで生まれる「農業の可能性」を感じるようになりました。

農園well-being|住み続けられるまちづくりを(65歳/2023年)
八王子市役所都市計画課からの呼びかけで始まった「小比企地区の農地を活かしたまちづくりに関する地域懇談会」に参加。今まで話す機会のなかった地域の農家や、東京都立大学の観光まちづくり科の教授、ランドスケープデザイナー、編集デザイナーなど、異業種の方との交流が始まりました。
この懇親会を通じ、コミュニティによる農園の活性化、農園の持つwell-beingの可能性を確信し、貸農園、援農ボランティアの募集を本格的に開始しました。

挑戦|パートナーシップで目標を達成しよう(66歳/2024年)
直売所の常連客から援農ボランティアになった人、得意分野を活かしてお手伝いくださる人、元PTA仲間など、年齢や業種を問わず多彩な方々が農園に集うようになり、以下のような新しい挑戦も始めました。
①LINEの活用:社会学専攻の大学生がLINE活用を提案。コミュニティの情報交換や援農ボランティアへの呼びかけをスムーズに。
②直売所のPOPづくり:管理栄養士とイラストレーターが直売所のPOP制作。おすすめのレシピ、保存方法などをわかりやすく。(ホームページにも掲載)
③公式ホームページの開設:定年退職した元エンジニア、編集デザイナーを中心に公式ホームページを開設。日々のできごとやお知らせを発信。
④里山の環境整備:近隣農家、造園デザイナーや体力に自信のあるジムトレーナー、クライマーなどの協力で、手付かずだった周辺の竹林の環境整備を開始。
⑤イベントの企画運営:アーティストとSDGsポスターを描く会、カメラマンによるフォトジェニックなひまわり畑づくりなど、農園の会員が自らイベントを企画。イベントがきっかけで今まで農業に関わりのなかった方々にも、興味を持ってもらえる機会が増えました。

みんなで、陸の豊かさも守ろう(67歳/2025年〜)
現在、貸農園の登録者は約50組。援農ボランティアの登録者数も約70名。私一人ではできなかったことが、コミュニティのみなさんのおかげで実現しています。
「みんなが主役の大久保ファーム」は、野菜だけではなく人を育てる農園。農業を通じて人と人とが触れ合いコミュニケーションを図り、色々な人との出会いで楽しく成長できるよう、私はこれからもみなさんと一緒に、陸の豊かさを守っていきます。